こちらの記事は私が読んで「面白い」と思ったオススメのWeb小説をご紹介しようというものです!
第十九回は、くにざゎゆぅ様様の「キスメット」です!
作品閲覧はこちらからどうぞ!
あらすじ(作品より一部引用)
~ノーコン超能力者と陰陽師とジェノサイド少年でバトルやラブを!~
不思議な力を宿すロザリオの出どころを探るために、海外赴任の両親と別れて日本に残ったヒロイン・ほーりゅう。叔母の監視下とはいえ、念願の独り暮らしをすることに。
そして転入した高校で、怪しげな行動を起こす三人組に気づく。その中のひとり、男子生徒の胸もとには、自分のものとそっくりなロザリオが。これはお近づきになって探るしかないよね?!
ヒーローは拳銃所持の陰陽師!?
ヒロインはノーコン超能力者の天然女子高生!
ライバルは一撃必殺のジェノサイド少年!!
ラブありバトルあり、学校や異世界を巻きこむ異能力系SFファンタジー。
舞台は日本…なのに、途中で異世界に行っちゃいます(行き来します)
学園コメディ…と思いきや、超能力×陰陽術×エージェントまで加わってのバトルアクション!
そしてヒロインは超鈍感…でも、恋愛はできるのです!!
キスメットは、運命という意味。彼らの辿る運命を見守ってくださいませ☆
(ノベルゲーム風)試し読み

扉を開けると、窓が閉まったままの部屋の中は真っ暗だった。
いまは夜の10時。初めて入る部屋だったので、後ろ手に扉が閉まってしまえば、電気のスイッチの位置がわからない。
それでも、扉をふたたび開けることをせず、ボストンバッグをぶらさげたまま、これからここで独り暮らしをはじめることになったわたしは、しばらくその場に立ち尽くした。
なんといっても、夢の独り暮らし!
独り暮らしの大変さは、全然心配していない。
というか、能天気なわたしは、はじめから考えていなかっただけなんだけれど。
わたしの両親はどちらも外科医であり、このたび数年ほど海外へ行くことになった。両親は、当然16歳である未成年のわたしもついてくるものと思っていた。けれど、わたしは日本に残りたいと言ったのだ。
はじめは、両親はとんでもないと認めなかった。でも、母方の叔母が保護者となってあずかると説得してくれた。
いままで通っていた高校を転校することになってしまったが、叔母のおかげで、わたしは願い通り、日本に残れることになった。
先ほどまで、マンションの五階にある叔母のところで夕食をいただきながら、今後の話を決めた。それから、これからわたしが住む部屋がある2階へと、降りてきたところだ。
叔母が住んでいるマンションは、1階が駐車場となる6階建ての、築10年ほどのデザイナーズマンションだ。
独身の叔母との同居も、ひとつの案としてあげられた。でも、叔母の住むマンションに空きがあったことと、こちらも外科医である叔母の不規則な生活に加え、思春期に対してお互いにプライベートを持たせてくれるという叔母の計らいで別居となった。そのうえ、別に暮らしつつも衣食住にかかる資金を、すべて持ってくれるという話のわかる叔母だ。
その代わり、独り暮らしに対する責任を自覚せざるを得ない。
引っ越しが決まったときに、極力減らしてきたけれど、部屋のなかは、おそらく運びこまれたままのダンボールの状態で、荷物が山積みにされているはず。
まずはひとりで生活する第一歩として、今夜中に生活ができる環境にしておかないとね。
◇◇◇
暗闇に目が慣れてきたころ、部屋の状態がわかってきた。ようやくわたしは、上り口にボストンバッグを置いて靴を脱ぐ。
あらかじめ叔母が取りつけてくれていたカーテンの隙間からもれる、わずかな外光を頼りにしながら、まっすぐ窓へ向かってそろそろと近づいた。
2階の部屋なので、夜の窓は、とくに気をつけなさいと言われたばかりだ。
けれど、とりあえず部屋にこもった空気を入れかえたいよね。
そう考えたわたしは、カーテンを片側に寄せると、静かな住宅街へ大きい音が響かないように鍵をあけた。ベランダの大きな窓を、ゆっくりと横へ滑らせる。
新鮮な風がゆるやかに入りこんできた。わたしの軽い毛質のロングストレートを、ふわりと揺らす。
部屋へ流れこんでくる9月の空気は、ひんやりと澄んでいて心地よかった。
ネコの額ほどの小さなベランダへ出ずに、わたしは部屋の中から窓の外を見おろす。
すると、すぐそばの電信柱につけられた街灯が、ひっそりと裏道を照らしていた。
この時間では、もう誰も通らないかな。
そう思った瞬間。
道のはずれの暗がりの部分で、白っぽいものが動いた。
とっさにわたしは、身体を退ひきかける。けれど、すぐに、まだ部屋の電気をつけていないことを思いだした。となると、逆にじっとしていたほうが、向こうの注意を引きつけないかもと考えなおして動きをとめる。
そのあいだに、先ほどの白っぽいものは音もなく移動し近づいてきて、電信柱の明かりの下で止まった。
その場に姿を現したのは、ひとりの男の子だった。
男の子の姿を見つけたわたしは、片側へ寄せていたカーテンへジリジリとにじり寄る。
身体を隠しながら、そっと興味本位で彼を観察した。
身長は、それほど高くない。
わたしより年下なのだろうか。
見た目の印象は、真面目そうな中学生って感じだ。
手ぶらだから、塾帰りってわけでもなさそう。
遠目に見る限り、顔はけっこう整っている。
闇夜に溶ける黒髪は短くはないが、そんなに長くもない。
白っぽい上着に濃い色のジーンズ……。
でも、もっと細かく観察するには、街灯の頼りない明かりだけじゃ足りない。
見つめながらそこまで考えていたとき、街灯の下で、おもむろに彼が上着を脱いだ。
そして裏返すと、黒っぽい色を表に向けて袖を通しなおす。
夜だから安全のために、いままで上着を明るめの目立つ色にしていたに違いない。
なのに、なぜわざわざ見えにくい色へと変えたのだろう……?
納得がいかないわたしは、ぼんやりと彼の行動を眺め続ける。
けれど、それだけだった。
特別、印象に残る顔でもなんでもないから、やがてわたしは我に返る。
わたしってば、なにやってんだろう?
いつまでも、知り合いでもないただの通行人を見つめていても仕方がないよね。
そう考えたわたしは、窓際から離れようとした――その一瞬。
上着を着なおした彼の首にかけている鎖とペンダントトップが、揺れた。
街灯の明かりを反射して、鈍く光を放つ。
そのペンダントトップに、わたしの目は釘づけになっていた。
そして、驚きのあまり、無意識に肌身離さずかけている自分のペンダントトップを握りしめる。
一瞬だったけれど。
彼がかけているものは、間違いなく自分と同じペンダントトップに見えたのだ。
わたしが呆然と眺めているあいだに、こちらに気づいた様子もない彼は、また足音をたてずに暗がりのなかへと、姿を消す。
わたしはその場から、しばらく動けなかった。
◇◇◇
言葉が通じないからという理由だけで、両親とともに海外へ行かなかったわけじゃない。
このわたしのペンダントは――中央に緑の石がはめこまれた十字架のロザリオは、物心がついたときには、すでにわたしの首にかかっていた。
わたしの危険なときには、何度も常識では考えられない力で助けてくれたのだ。
そして、ロザリオを見つめるたびに、この日本から離れてはいけないという声が、どこからか聞こえているような気がしていて……。
両親に聞いてもあいまいだったロザリオの出どころと理由、それがわかるまで、わたしは日本にひとりで残ってでも調べてみようと思っていた。
その矢先の偶然だ。
この街に着いたとたんに見つけた糸口に、今夜は眠れそうもないくらい、わたしは期待を膨らませた。
とはいっても、手掛かりは、一瞬だけ目にした彼の姿だけだ。
離れていたし暗かったうえに、とくに特徴がある顔立ちだったわけじゃない。
せいぜい、手ぶらで徒歩だった彼が、このあたりが校区となる中学校の生徒だろうと見当をつけるくらいだ。
眠れないと感じた興奮を利用して、真夜中まで引越しのダンボールをあけながら、わたしはどうやって、この街で彼を探しだそうかと考え続ける。
けれど、まったく思いつかないまま、わたしは次の日の朝を迎えてしまった。
感想
「ラブ」と「バトル」をメインに、「異世界」「異能力」など色々な要素を楽しめます。
各話ごとにそれぞれの人物視点で描かれ、非常にわかりやすく、読みやすい文章です。
キャラクターの掛け合いや人物関係が面白く、長いというよりは「ゆっくり」楽しむことが出来ます。
非常に面白い作品ですので、是非一度読んでみてください!
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※ネタバレを含みます!
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